当院のコンセプト

医療を上手に利用しましょう

受診目的を伝える医療には適切な検査と診断が不可欠ですが、なにより大切なのは患者様と医師のコミュニケーションです。診療のスタートは患者様からの情報提供となり、医師と患者様がしっかり相談することで検査内容や治療方針も決まります。また、よりよい医療を受けるためには、患者様がご自分の状態や治療内容を理解することも重要になります。

医療の上手な利用法を知っていれば、こうした情報のやりとりをスムーズにでき、より患者様に適した診療を受けられます。ここでは、初診・検査・治療・健康診断といったケースごとに概要をご紹介しますので、参考にしていただければと思います。

初診の際にお伝えいただきたいこと

受診目的を伝える

つらい症状がある、調子が悪い、健康不安がある、慢性疾患のコントロールなど、医療機関を受診する目的はさまざまです。そこで、初診の際には「なぜ受診したか」をまず医師に伝えます。
受診目的は、「つらい症状・気になる症状」「健康診断などで要精密検査を指摘された」というものだけではありません。「健康に関する不安」も重要な受診理由になります。「健康に関する不安」で受診される場合には、その不安が起こったきっかけについてもお伝えください。
受診のきっかけに「父親が今の自分の歳で脳梗塞を起こした」「特に体調が悪い様子がなかった友人が急に倒れた」などがよくあります。こうしたきっかけについても医師に伝えることが重要です。

症状について伝える際のポイント

症状はその内容に加え、下記のようなことをお伝えいただけると診断に役立ちます。事前にメモしておくと伝え忘れがなく、安心できます。

  • 症状の内容 起こっている場所/感覚など
  • 症状が初めて起こった時期
  • 経過(急に起こった/徐々に強くなった/多少よくなってきている)
  • いつも症状がある/起こったり治まったりを繰り返す
  • 症状が強まる/起こるきっかけ
  • 症状で特にお悩みの点/日常で困っていること

医療機関の選択

患者様の状態や体質はそれぞれ異なりますし、お身体の状態は生活環境や食生活などの影響を受けて短期間に大きく変化することがあります。継続的にお身体の状態を確認している「かかりつけ医」がいれば、より正確な診断と有効な治療が可能になります。また、「かかりつけ医」がいれば、専門的な高度医療が必要になった際にも、最適な医療機関を紹介してもらうことができます。
重大な病気はある日突然起こって、取り返しがつかないこともあります。ちょっと調子が悪いなどで気軽に受診するのは、取り返しのつかないことを防ぐためにはとても重要です。それほどたいした症状がないのに病気が見つかると落ち込んでしまう方がいらっしゃいますが、なにもない段階で見つかったからこそ楽な治療で治せる病気はたくさんあり、そこで発見できたのは実は幸運なことです。ちょっとした不調や健康不安があった際も気軽に受診できる「かかりつけ医」を見つけて、健康に役立てましょう。

検査について

なぜその検査が必要なのかを理解することが重要です。わからないことがあったら、些細なことでも医師に質問しましょう。検査には、楽に受けられるもの、リスクがあるもの、不快感や痛みがともなうもの、前日や検査後に食事などの制限があるもの、結果が出るまでに1週間程度かかるもの、高額なもの、特定の施設でなければ受けられないものなどがあります。こうしたことを事前に理解しておきましょう。
また、検査後は、検査によってどんなことがわかったのか、しっかりわかるように説明してもらいましょう。

検査の目的

検査は、現在起こっている症状などの異常の原因や病変の状態を確かめる、そして今後起こることを予測するために行います。検査目的には、「症状から疑われる病気かどうかを確かめる」「すでに診断を受けている病気の経過や治療の効果を調べる」「健康診断や検診、人間ドックのように、症状がない段階で病気の早期発見のために行う」などがあります。

検査の種類

検体検査 血液・尿・組織などを採取して調べます
画像検査 X線・CT・MRI・超音波・血管撮影などで異常を調べます
機能の検査 心電図・肺機能など臓器の機能を調べます
内視鏡検査 胃カメラ・大腸カメラ・鼻内視鏡など、消化管・鼻腔などの粘膜を直接観察します

検査結果と経過観察

検査には、病気ではないのに陽性の結果になる偽陽性、その逆で病気なのに陰性になる偽陰性の可能性がゼロではないため、状態と検査結果に矛盾があるなどの場合には、さらに精密な検査が必要になることがあります。ただし、経過観察が適しているケースもよくありますし、そうしたケースで無理に過剰な検査を受けるのは患者様にも大きな負担になります。

「かかりつけ医」と検査

職場などで健康診断や検診を受けた場合や他医療機関で検査を受けた場合、結果を「かかりつけ医」に見せるようにしましょう。こうした検査結果は「かかりつけ医」で必要のない検査をすることなく正確な診断にも生かせますし、将来の健康を考慮した診療に大きく役立ちます。また必要な場合は、「かかりつけ医」がより詳細で専門的な検査を他の医療機関で受けられるように手配します。

治療について

治療についてお身体の状態や治療について理解することで、本当にご自分に合った治療方法を選ぶことができます。詳細な医学知識が必要なわけではなく、ご自分なりに理解された上で納得して治療を受けることで、その効果を得やすくなります。

治療は、不快な症状を解消したり、将来の悪化を防ぐために行いますが、不快感や痛みをともなうこともありますし、その後に副作用や合併症を起こすリスクもゼロではありません。また、日常生活に不便や支障を及ぼす可能性があり、治療費が高額なケースも存在します。
同じ病状でも、患者様のライフスタイルやお考えによって最適な治療方法は変わります。また、いくつかの治療方法があって、それぞれメリット・デメリット・リスクが異なるケースもよくあります。

診断 現在の状態と将来の予測をします
治療の要不要 経過観察だけで十分な病気もあります
治療目標  症状を消す/進行を止めるなどです
治療の重要性 症状の有無に関係なく、治療せずに放置すると命に危険が及ぶ病気もあります
治療方針 いくつかの治療が可能な場合、リスク・メリット・デメリットなどを考慮した上で最善のものを選びます

治療しても十分な結果を得られないケースも存在します。経過を観察しながら最適な治療法を見つけていく必要がある慢性疾患も少なくありません。再診時には、治療を受けてからの経過を伝えて、よりよい医療につなげていきましょう。

また、眼科・耳鼻咽喉科・外科・産婦人科・歯科など、「かかりつけ医」ではない医療施設を受診した場合には、その内容を「かかりつけ医」に必ず伝えましょう。より安全で効果的な治療を受けるためには、そうした情報は不可欠です。必要であれば、その医療施設と「かかりつけ医」が連携してより質が高く総合的な治療も可能です。

健康診断について

健康診断職場や自治体が行う健康診断は、症状がない時点で病気を早期発見して効果的な治療や予防につなげて、発症や進行させずに将来の健康を守るために行われます。症状がある場合や健康不安がある場合には、健康診断の時期まで待たず、できるだけ早めに医療機関を受診しましょう。

健康診断では、日本人の死亡原因の6割を占める三大死因の「がん」「心臓病」「脳卒中」の予防に重きを置いています。ほとんどのがんは、早期発見により楽な治療で完治が期待できます。心臓病や脳卒中は自覚症状なく進行する高血圧・糖尿病・高脂血症といった生活習慣病の早期発見と適切な治療の持続により将来のリスクを大きく低減できます。

健康診断の検査結果で異常を指摘されたら、それで病気と診断されるわけではありません。血圧や心電図、血糖値などで異常があっても、医療機関を受診して適切な検査を受けてみなければ、病気なのか、それとも病気はなくたまたまそうした結果が出たのかはわかりません。そのため、過剰に心配してしまう方と、油断して悪化・進行させてしまう方がいるのです。

健康診断の結果は表などで結果の数値が並んで出ていることがほとんどで、異常の有無や要精密検査といった指摘はあっても個人に合わせたリスクなどについてくわしく伝えるものではありません。健康診断では上記のような病気が見逃されてしまうケースや、個々の数値は悪くなくても総合的・長期的に判断するとリスクが高いケースもあります。また、体質や遺伝、環境などにより疾患リスクはお一人おひとりが大きく異なります。

気軽に相談できる「かかりつけ医」がいれば、こうした健康診断などの結果を伝えることで将来の健康に大きく役立たせることができます。生活習慣の改善などが必要になることも多いのですが、こうした改善はご自分らしい生活を快適に送っていくために行うものです。健康を守るために過剰なストレスがかかってしまえば逆効果にもなりかねません。そうした意味でも、ご自分のことをよく理解している「かかりつけ医」がいればどんなことでも気兼ねなく相談できるため、安心できます。

診療のあり方 治療目標の共有

診療は、健康上の問題を解決するために行うものであり、患者様と医師が相談しながら治療目標や治療方針を決めて、できるだけ最小限の医療で治療を行っていくことが重要です。病気には、経過観察だけで十分なもの、予防や進行抑制に生活習慣の改善が必要なもの、投薬・処置を行うべきもの、手術が必要なものなどがあります。また、早急な治療が必要なケースもありますし、経過観察しながら慎重に見極めて治療方針を決めるべきものもあります。
こうした治療に関して最初に重視するのは、治療目標を患者様と医師が共有することです。治療目標には、治癒、緩解(寛解)、コントロール、対症療法があります。

治癒  病気を完全に解消します。粉瘤をはじめとする良性腫瘍の摘出など
緩解(寛解)  症状が治まっていて、再び症状を起こす再燃の可能性がある状態です。クローン病・潰瘍性大腸炎など
コントロール 治療を継続することで発症や進行をある程度、抑制できている状態です。糖尿病をはじめとする生活習慣病など
対症療法 疾患自体の治療とは別に、症状の軽減を図る治療を行います。風邪・花粉症・末期がんなど